東京高等裁判所 昭和39年(う)709号 判決
被告人 鈴木明
〔抄 録〕
所論は、原判決は被害者福田俊雄、同岩井正次の乗車せる軽自動二輪車との衝突による業務上過失致死傷を想像的競合の一罪とし、これと被害者坪井寿彦の乗用車との衝突による業務上過失傷害とを刑法第四五条前段の併合罪として処断しているが、本件はすべて想像的競合として処断すべき場合であるから原判決の法令の適用は誤りであると主張する。
そこで検討してみるに、前述のとおり本件においては相手方の車は二台であつて、被告人の車とこれらとの衝突は時間的に前後しているけれどもその原因は既に見たように被告人の一個の過失行為にあるのであつて、而も右時間的前後の差はまさに瞬間の差と云つて差支えなく、一台目との衝突後新に別個の注意義務を生じているのにこれをも怠り二台目と衝突した場合とは全く趣を異にするものである。従つて本件事案においては一個の過失行為により二個の衝突、三名の致死傷の結果を発生せしめたもの、即ち想像的競合の関係に立つものと解するのが相当であつて、原判決はこの点において法令の解釈適用を誤つたものと云わなければならず右の誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから論旨は理由がある。
(長谷川 関 金末)